プロフェッショナル写真市場向け商品のラインアップ - “ニューフジクローム”の発売など
プロカメラマンの高度な要求に応えて、当社は、プロ用カラーフィルムの整備を進め、1983年(昭和58年)3月、“ニューフジクローム”を開発、デーライトタイプ3種、タングステンタイプ1種を発売し、カラーデュープフィルムの商品化とあわせて、コマーシャルフォトにおけるカメラマンのあらゆる要望に応え得るラインアップを確立する。一方、営業写真の分野では、七五三・婚礼・成人式などの既存需要の拡大に努めるとともに、新規需要の拡大に努める。また、中判カメラの分野では、アドバンスドアマチュアを含む広い需要層を対象に、セミ判スプリングカメラ2機種と6cm×17cm判パノラマカメラを新しく商品化する。
新世代の色 -“ニューフジクローム”の発売
フジクロームプロフェッショナル商品群
フジクロームデュープリケーティングフィルム
カラーリバーサルフィルムについては,当社では,プロカメラマンの高度な要求に応えられる品質のレベルアップと製品ラインの整備を目指して研究開発を進めた結果,次々と新製品を開発し,1980年(昭和55年)には,高感度タイプの“フジクローム400”を発売した。
次いで,1983年(昭和58年)3月には,先進技術を結集して開発した“ニューフジクローム”の発売に踏み切った。発売に先立ち,前年の1982年(昭和57年)10月,西独のケルンで開催されたフォトキナ’82に出品した。多様化・高度化するプロフェッショナルのニーズに応えた高画質タイプの“ニューフジクローム”は,人びとの注目の的となった。
“ニューフジクローム”は,当社が開発した新しい写真乳剤技術を駆使した結果,世界最高水準のシャープネスと粒状性を実現,鮮明で忠実な色再現性,整った階調バランス,繊細な質感とメリハリのある立体感描写など,優れた写真性能を実現した。また,プロ用カラーリバーサルフィルムは,印刷原稿として使われる頻度の高いことを考慮し,特に印刷製版適性をもたせた。同時に,製品ラインも整備し,プロ写真家や映像に関するさまざまな分野のユーザーの要望と期待に応えた。診断・研究など広くカラーリバーサルフィルムを使用する医学写真の厳しい性能要求にも,十分対応した。
“ニューフジクローム”の製品ラインは,次の4種類である。
○ “フジクローム50プロフェッショナルD”(感度ISO50)
○ “フジクローム100プロフェッショナルD”(感度ISO100)
○ “フジクローム64プロフェッショナルT”(感度ISO64)
○ “フジクロームデュプリケーティングフィルム”
“ニューフジクローム”は,同年2月に発売した一般用カラーネガフィルム“フジカラーHR”に採用したL-カプラーのほか,新しく開発したUDG技術・SSS技術・AME技術によって完成した新世代のカラーリバーサルフィルムである。
UDG(Uniformly Developing Grain)技術は,新しい増感技術によって,高感度でありながら微粒子で現像性のそろった粒子を形成する技術である。この技術によって,粗い画像の原因となる粒子の粗大化を防止し,きめ細かく粒状の整った画像の形成が可能となる。L-カプラー技術と相まって,繊細な質感描写と力強くメリハリのある画像が得られる。
SSS(Sharp Spectral Sensitization)技術は,ハロゲン化銀粒子と増感色素の組み合わせについての技術である。これによって,シャープな分光感度が得られるので,鮮やかでしかも色分離の良い色再現が実現できる。
AME(Automasking Emulsion)技術は,“ニューフジクローム”のために新しく開発した写真乳剤技術で,現像時に赤・緑・青の3層の乳剤間で設計どおり精密にコントロールされた状態のもとで,相互に作用しあうことにより,重層効果(現像により3層相互の影響で色再現性・色分離が変化する効果)を発揮し,さらにSSS技術との相乗作用で,純度の高い色再現が可能になった。
また,“フジクロームデュプリケーティングフィルム”は,印刷用その他に用いられる当社初の複製専用のカラーフィルムで,撮影用“ニューフジクローム”と同等の高性能を備え,確かな色再現性と描写力で,オリジナルを忠実に再現する。
“ニューフジクローム”は,パッケージデザインを一新し,グリーンとCIマークを基調に,感度やタイプを明確に表現したシンプルなデザインとした。優れた品質に加えて,積極的な市場開拓努力によって,“ニューフジクローム”はプロフェッショナルユーザーの間に確実に定着してきた。
医学写真に貢献するフジクロームフィルム
フォトスタジオでのコマーシャル写真撮影
中判用カメラ3機種の発売
フジカGS645プロフェッショナル
フジカパノラマG617プロフェッショナル
フジカGS645Wプロフェッショナル
当社の中判用カメラは,その独自の携帯性・操作性・機構・フジノンレンズの描写性など,プロ写真家の志向する内容を満たしたカメラとして高く評価され,プロフェッショナル写真の広い領域で活用されている。
1983年(昭和58年)に入って,当社は,フジカプロフェッショナルカメラの製品ラインに,従来からの6cm×9cm判カメラと6cm×7cm判カメラに続いて,新しくセミ判(6cm×4.5cm)カメラ2機種とパノラマカメラ1機種を加えた。
その一つは,1983年(昭和58年)3月に発売したセミ判スプリングカメラ“フジカGS645プロフェッショナル”で,蛇腹式を採用したために軽量かつコンパクトボディーを実現した。レンズは,新設計の4群5枚構成“EBCフジノンS F3.4 75mm”を装着し,大伸しにも十分対応できる高画質性と速写性・携帯性を追求したカメラである。
“GS645”と同時に発売した画面サイズ6cmx17cmのパノラマカメラ“フジカパノラマG617プロフェッショナル”は,小型・軽量化したボディーで,操作性・携帯性に優れ,縦・横撮影に使い分けできるようにボディー側シャッターボタンを2か所に組み込むなど,新機軸を盛り込んだ。レンズは,周辺光量やシャープネスに優れた“EBCフジノンSW F8 105mm”を装着した。パノラマサイズの広い画面は,風景写真・建築写真・コマーシャルフォト・航空写真において,新しい局面を開くカメラとして注目される。
次いで,同年10月には,セミ判ワイドカメラ“フジカGS645Wプロフェッショナル”を発売した。本機は,先に発売した蛇腹式スプリングカメラ“ブジカGS645”のシリーズ機である。レンズは,“EBCフジノンW F5.6 45mm”を装着した。画角76度のワイドの特長を生かし,風景写真・スナップ写真・集合写真に適したカメラである。
フジカプロフェッショナルカメラは,プロ写真家だけでなく,アドバンスドアマチュアにも,35mm一眼レフに続く第2のカメラとして期待されたのである。
フジカパノラマG617プロフェッショナルで撮影したパノラマ写真
営業写真の需要拡大へ
カジュアルフォト
フジカラードリームフォト
プロフェッショナル写真の宣伝ポスター
いわゆる営業写真は,100年以上に及ぶ長い歴史をもち,連綿と今日まで受け継がれてきた業界である。この間,幾多の変遷を経てきたが,戦後のベビーブーム世代が婚期に達した1970年代前半のブライダルブーム期には,営業写真のカラー写真化が急速に進んだ。しかし,1970年代後半には,結婚の対象人口が減少し,また,営業写真の主流をなす七五三・成人式などの人生を彩る大切な行事での記念写真の対象人口についても,横ばいあるいは減少の傾向にある。
営業写真を取り巻く厳しい環境にあって,営業写真館では,撮影ショット数の増加やサイズの大型化などの営業努力で対応するとともに,記念写真などの既存需要の見直しと若い世代を対象とした新規需要の開拓を図ってきた。これらの対策は,単に販売促進だけに結びつくのではなく,営業写真に対する関心を呼び起こし,将来の営業写真人口の増加に寄与するものである。特に,若い世代を対象とした野外におけるロケーションフォトやスタジオでスナップ的に気軽に写すカジュアルフォト,そして多数のショットから顧客が選ぶプルーフフォトなどの商品メニューは,営業写真の良さを若い層に認識させることに効果があった。
積極的な業界の動きに対応して,当社は,各種製品の開発や品質のレベルアップに努め,市場の拡大を目指し,営業写真館の期待に応えている。
1983年(昭和58年)に開発した合成プリントで華やかな雰囲気を添える“フジカラードリームフォト”や営業写真館に保存しているネガ原板からのポストカード作成などの販売ツールを紹介し,若い世代への商品メニューの多様化に協力した。また,営業写真の原点というべきファミリーフォトキャンペーンの実施,七五三・成人式など時期に応じたポスターその他宣伝物の配布など,需要者へのアプローチを図っている。
1981年(昭和56年)に発売したフジインスタント写真システム“フォトラマ”についても,急ぎの写真や婚礼・七五三・成人式その他のサービス写真など,営業面で積極的に活用を図っている写真館が多い。