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経営効率化の推進

 

1980年(昭和55年)12月、当社は、経営戦略企画の強化と経営システムの改善効率化を一層推進するため、社長室と経営効率推進室を発足させる。1982年(昭和57年)11月には、市場構造の変化や技術革新のテンポの激しさに対応して、商品企画機能とマーケティング機能を強化するために、大幅な組織改正も実施する。また、技術革新時代に対応して、当社にふさわしいオフィスオートメーションの導入を進め、コンピューターの活用範囲もさらに充実強化し、新しいシステムを次々に完成させて、経営管理システムの向上を図っていく。こうして、当社は、新しい時代に即応したより効率的な経営を目指して着実な歩みを続けていく。

経営効率施策の推進

当社は,これまでもその時代時代にマッチした効率的な経営のあり方を追求し,対応に努力してきたが,1980年代に入って,経営環境のめまぐるしい変化と事業分野の拡大に対応して,経営管理の効率化がより一層強く求められてきた。

この対策の一環として,1980年(昭和55年)12月,組織改正を行ない,経営戦略企画の強化を図るべく,新たに社長室を設置するとともに,経営システムの改善と効率化を推進するため,経営効率推進室(後に経営効率推進本部と改称)を発足させた。

経営効率推進室は,本社事務管理部門に加えて,従来の電子計算部門・物流管理部門も統合し,全社の経営効率の推進・オフィス業務の生産性向上・より効率的な物流システムの確立を目指し,全社的な業務効率化を推進する体制を敷いた。また,富士フイルムグループの結びつきをより強化して,グループとしての発展を図るための関係会社との連携の一元化および当社創立50周年記念事業の企画業務も併せて担当することとした。

特に,関係会社に対しては,各社ごとに当社との定例的な業務会議を開催して,経営目標の一体化と経営政策の調整を図るとともに,CIを共有するグループの一員としての意識の向上あるいは当社の中・長期計画と連結する経営計画の策定を進めるなど,富士フイルムグループとしての総合力の向上を目指している。

一方,市場構造の変化や技術革新のテンポの激しさに対応して,1980年代の新たな展開を図るため,商品企画機能とマーケティング機能の見直しを行ない,1982年(昭和57年)11月,組織改正を実施した。

商品企画機能については,新たに商品開発推進本部を設け,これまで商品ごとに各部門に分かれていた商品企画開発業務を一本化した。同本部内に,システム開発部門・技術情報部門・工業デザイン部門・工業標準部門を置くとともに,商品化企画委員会を設け,ここを商品企画の全社的な審議推進機関とした。

また,営業部門については,市場の変化に敏速に対応して,総合的・革新的なマーケティング活動を展開し,単に個々の商品だけでなく,システム全体を包含した営業施策を推進するため,国内営業部門について,これまでの営業第一本部・営業第二本部などの組織を改めて,フォトプロダクツ営業本部・情報システム営業部・印刷システム営業部・産業機材営業部・磁気材料営業部をそれぞれ設置した。

また,資金の調達・運用業務をさらに効率化するとともに,ワールドワイドに資金マーケットとのコミュニケートを図るべく,財務部を設けるなどの組織改正も実施し,全社組織の強化を図った。

コンピューター活用の推進

1980年代に入って,コンピューターの活用も,全社の経営効率向上という目的から新たな展開を開始した。

1981年(昭和56年)には,総合予算編成システムをベースとした販売損益シミュレーターとして「経営マクロモデル」を完成した。そのほか,工場・営業倉庫間の製品配分をコントロールする「自動配分システム」,特許情報を効率的に探し出す「画像工学特許情報検索システム」,ベンゼン核などの図形データを処理する「化合物構造検索システム」などを完成して,コンピューター適用業務に広がりを出した。

[写真]コンピューターによる化合物構造検索システム

コンピューターによる
化合物構造検索システム

[写真]事務効率化に活用されているオンライン端末装置

事務効率化に活用されている
オンライン端末装置

[写真]全社オンラインネットワークの中心となるコンピューター室

全社オンラインネットワークの
中心となるコンピューター室

また,コンピューター利用をさらに普及させるべく,社内の各部門で直接コンピューターの利用ができるように,ハード面では分散処理用コンピューターを各工場および東京本社に順次設置,ソフト面ではFOCUS言語を用意した。

また,問題解決技法として“F-SPAN”(Fuji Film Systematic Problem Analysis Method by Needs,関係者の衆知を集め,全員のコンセンサスを得ながら,説得力のある解決策を講ずるための問題の整理分析とシステムの設計のための技法)を開発し,多くの職場に適用されて成果をあげている。

1982年(昭和57年)には,漢字表示による対話型システム「総合人事情報システム」が完成し,稼動を開始した。このシステムの中核である検索ソフトは,「QING」の名称で市販し,優れた操作性とはん用性から好評を得ている。

また,ラボの品質向上とコストダウンを目的として,開発を進めてきた「FUJITECOM」システムでは,初めてイメージ伝送技術が使われ,コンピューター活用技術の前進が図られた。

このほか,富士宮工場感圧紙製造オンラインシステムや同在庫削減システム,そして、富士マイクログラフィックス社の部品オンラインシステムなどの合理化システムも次々に完成した。

なお,コンピューターの活用を通じてシステム全体の改善向上を図るとともに,経営各層に対する情報システムをさらに一段と整備・拡充するために,同年11月,電子計算部をシステム管理部と改めた。

1983年(昭和58年)になると,将来のオフィスシステム構築の第一歩として「多機能端末」の導入に踏み切ることとし,必要な対策を講じた。他方,東京本社のコンピューターは最新鋭のIBM3081Kにレベルアップし,処理能力を3倍に増強した。

また,東京・ニューヨーク間に回線を開設,初めて海外とのデータ伝送を開始し,グローバルオンラインネットワークの構築に向けても新たな1ページを開いた。

アプリケーションの面では,月度生産計画システム・販売計画立案支援システムなど,ディスプレイ画面との対話型システムが一部稼動を開始し,計画立案面でのコンピューター利用が一段と強化された。

さらに,トータル在庫削減システムでは,その適用範囲をカラーペーパーやリスフィルム,PS版などにも拡大し,それぞれ効果をあげている。

一方,IE・QC教育については,社内のほか,カラーラボおよび関連会社へも普及させ,富士フイルムグループ全体としてのレベルアップを図っている。

今後は,事務部門でのオフィスオートメーション化の促進に加えて,製造部門における生産計画や製造作業の一層の効率化を目指すファクトリーオートメーションの推進や研究部門における研究効率の一段の向上を目指すラボラトリーオートメーションの促進を図るなど,従来にもまして革新的な課題に取り組んでいくこととしている。

事務効率化とオフィスオートメーションの導入

[写真]足柄工場新事務所 1982年(昭和57年)6月

足柄工場新事務所
1982年(昭和57年)6月

当社では,オフィス業務の生産性向上について,かねてから,コンピューターの活用により全社的なオンラインシステムの整備を進めるとともに,ファイリングシステムの導入とマイクロ写真システムの活用を進め,日常の事務の進め方をきめ細かく見直し,効率化を図ってきた。

1980年代に入って,事務・間接部門の生産性向上の一手段として,オフィスオートメーション(OA)がにわかに脚光を浴び,各種のOA機器が開発されてきた。

当社は,各種OA機器のハードとソフトの開発の状況に対応しつつ,事務の見直しを進め,効果のある分野ごとに個別に,当社に適したOAシステムの導入を進めてきた。

ファクシミリネットワークの整備も進め,1980年(昭和55年)以降,営業部門・工場間・物流管理部門間・特許関係・購買取引先関係などから展開を図り,順次,国内営業関係・海外関係へと広げていった。

また,事務効率化を推進する全社運動として,1982年(昭和57年)から翌1983年(昭和58年)にかけて,全社あげて「P-50運動」(ぺーパーレスと事務効率化運動)に取り組み,所期の成果を得た。社内会議の一層の効率化も進め,役員会議室へのビデオ会議システムの導入なども図っている。

なお,東京本社は,オフィス業務におけるコンピューターの活用と総合的な効率化の推進姿勢が評価されて,日経産業新聞創刊10周年記念事業として行なわれた「全国先端事業所百選」に入賞,1983年(昭和58年)10月,表彰を受けた。

当社は,同じくOA化による事務合理化の一環として,1983年(昭和58年)12月からは,主力取引銀行と当社のコンピューターをオンラインで直結し,資金の振り込みや入金情報などの迅速処理をねらいとして「ファームバンキングシステム」の導入を開始し,事務の効率化・省力化を図っている。

 
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