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プロ用商品の充実

 

1970年代前半のブライダルブームは、営業写真館におけるカラー写真の普及に拍車をかける。この間、当社は、カラー感光材料の品質向上とともに、カラートレーニング、講習会・実験会、機関誌、営業写真コンテストなどを通じ、営業写真館のカラー技術の向上とカラー写真の普及に努める。また、カラー写真時代に対応して、カラー撮影適性を盛り込んだ中判カメラや大判カメラ用レンズの商品化を進める。他方、コマーシャル写真市場でも、品種整備と品質のレベルアップに全力を尽くすとともに、“フジクロームCBプリント”および“フジクロームRPプリント”を開発し、商品化する。1974年(昭和49年)7月には、プロフェッショナル商品部を新設し、営業活動を積極的に進めていく。

営業写真館用カラー感光材料の整備

営業写真館やプロカメラマンは,高度な撮影技術を駆使し,目的に沿った高品質の写真を制作しなければならない。それだけに,フィルムや印画紙,カメラなどの選択には慎重で,その品質・性能の評価とメーカーに対する注文は厳しいものがあった。

当社が営業写真館用として,最初にフジカラーシートフィルムを発売したのは,1963年(昭和38年)6月のことで,このころから婚礼写真にカラー写真が使われ始めた。当時は,カラー写真は,営業写真にとってまだ新しい分野であったが,当社は,カラー写真の将来性を見込んで,カラーフィルムやカラーぺーパーの品質改良とカラーラボの整備に努めた。

1972年(昭和47年)をピークとするブライダルブームは,営業写真におけるカラー写真化に大きな影響を与え,婚礼写真だけでなく,その他の需要にもカラー写真化が促進された。すなわち,七五三や成人式などの記念写真をはじめ,ポートレートや家族写真・学校写真,観光地での記念写真にまで及び,1970年代後半には,この分野ではカラー写真が黒白写真を上回ってきた。

[写真]フジカラーN プロフェッショナル タイプS

フジカラーN
プロフェッショナル タイプS

[写真]フジカラーN プロフェッショナル タイプL

フジカラーN
プロフェッショナル タイプL

[写真]フジカラーF-II プロフェッショナル タイプS,タイプL

フジカラーF-II
プロフェッショナル タイプS,タイプL

当社では,こうした情勢に対処し,営業写真館からのニーズに応え,1972年(昭和47年)3月に“フジカラーNプロフェッショナルタイプS”(短時間露光用,感度ASA100)と“タイプL”(長時間露光用,感度ASA50)を発売した。従来タイプより,“タイプS”は25%,“タイプL”は60%,それぞれ感度アップした。両タイプとも一般用の“ニュータイプフジカラーN100”と同様に,オイルプロテクトカプラーを採用したフィルムで,各種の撮影用光源への適応性を広め,画質や色再現性,ラチチュードなど品質のレベルアップを図った。サイズについては,大名刺判と4×5判のシートフィルム、そしてブローニー判を整備した。

一方,カラーぺーパーも迅速処理性の優れているWPタイプに切り換える計画の一環として,1974年(昭和49年)6月より“フジカラーぺーパーWPプロフェッショナル”(タイプ07)に切り換えた。このぺーパーの商品化に当たっては,営業写真として最適の階調を再現するために多大の苦心がなされた。また,発色の優れたカプラーを使用したので,赤の色調がよくなり色再現性も向上した。プリントの保存性も大幅に改良された。面種については,従来の光沢滑面に微光沢滑面と半光沢絹目を加えて3種とした。

次いで,1976年(昭和51年)1月,微粒子タイプの“フジカラーF-IIプロフェッショナル タイプS”(感度ASA100)と従来より60%感度アップした“タイプL”(感度ASA80)を発売した。このフィルムは一般用“フジカラーF-II”で開発したIRG(現像抑制物質放出型粒子)技術を基礎に,さらに改良を加え営業写真館用に開発したフィルムで,粒状性やシャープネスが飛躍的に向上した。また,階調と色再現性を高め,画質を一段とレベルアップさせた。

さらに,1980年(昭和55年)4月“フジカラー100プロフェッショナル タイプS”(感度ASA100)を,同年9月“フジカラー80プロフェッショナル タイプL”(感度ASA80)を,それぞれ発売した。これらのフィルムは,IRG技術に加えて“フジカラーF-II400”で開発したCLG技術を導入した新しい写真乳剤を使用し,粒状性とシャープネスをさらに高め,併せて,微妙な色の細かい変化を表現する色再現性を向上させ,一段と品質をグレードアップし,営業写真館のニーズと期待に応えた。

また,新しいタイプのフジカラープロフェッショナルフィルムとのシステム性能の良化を図るため,カラーペーパーについても1980年(昭和55年)7月に新しく“フジカラーぺーパーWPプロフェッショナル”(タイプ08)に切り換えた。ハーフトーン(中間濃度)からシャドウ(画像の黒いところ)までの階調描写を良化し,肌色描写とカラーバランスを整えた。また,ぺーパー感度と乾燥速度をあげ,ラボにおける作業性の向上を図った。

人像用印画紙“銀嶺”の改良

[写真]黒白印画紙 銀嶺WP(レーベル)

黒白印画紙
銀嶺WP(レーベル)

1969年(昭和44年)10月に商品化した人像用印画紙“白銀”は,密着・引伸し兼用紙として,中判カメラ普及のタイミングもあって好評を得たが,営業写真でのカラー写真の著しい普及に伴い,黒白印画紙の需要が次第に減少したことから,1977年(昭和52年)に生産を中止し,人像用印画紙は“銀嶺”1種となった。人像用印画紙“銀嶺”は,1940年(昭和15年)に発売して以来,連綿として続き,この間,時代の推移とともに幾度となく品質改良しレベルアップを図ってきた。1978年(昭和53年)11月にはWP紙を使用した“銀嶺WP”に全面的に切り換えた。

“フジクロームプロフェッショナル”の発売

プロ用のカラーネガフィルムが主として営業写真館で使われるのに対し,プロ用カラーリバーサルフィルムは商業写真を主として,カラー印刷原稿や学術用・産業用などの業務用写真にも使用される。

[写真]フジクローム100 プロフェッショナル タイプD

フジクローム100
プロフェッショナル タイプD

[写真]フジクローム64 プロフェッショナル タイプT

フジクローム64
プロフェッショナル タイプT

[写真]フジクローム400 プロフェッショナル タイプD

フジクローム400
プロフェッショナル タイプD

当社は戦後間もなく,1948年(昭和23年)に“フジカラーリバーサルフィルム”(外型,感度ASA10)を発売し,初めてカラー市場に進出したが,プロフェッショナル用として内型反転方式のシートフィルムを発売したのは,それから21年後の1969年(昭和44年)のことであった。当時,印刷製版技術の進歩に支えられ,カラー印刷原稿としてのカラーリバーサルフィルムの需要が急増した。しかし,カラーリバーサルフィルムの市場は,すでに輸入品が豊富な製品ラインで強力な地盤を築いていたので,当社フィルムの入り込む余地は少なく,普及は容易でなかった。そこで当社は,より優れた品質に改良を図るとともに製品ラインの充実を進めていった。

1972年(昭和47年)12月には,デーライトタイプの“フジクロームプロフェッショナル120 タイプD”とタングステンタイプの“フジクロームプロフェッショナル120 タイプT”(いずれもブローニーフィルム)を発売した。両タイプとも感度はASA100で,従来タイプより大幅に感度アップした。両タイプとも,鮮明で彩度のよい発色と忠実な色再現性,および優れた印刷適性など,プロ用としての条件を十分に満たしたフィルムであった。また,現像処理のはん用性を高めるため,高温処理適性をもたせ,1966年(昭和41年)にコダック社で採用した高温迅速処理方式にも対応した。

その後,1978年(昭和53年)10月に,デーライトタイプの“フジクローム100プロフェッショナル タイプD”(感度ASA100)と翌1979年(昭和54年)3月には,タングステンタイプの“フジクローム64プロフェッショナル タイプT”(感度ASA64)をそれぞれ発売した。自然の色の再現性と片寄りのない階調を目標としたフィルムで,特に肌色描写がよく,シャープネスや粒状性,階調を改良した。両タイプとも写真乳剤膜に硬膜処理を施し,現像前の硬膜処理をせずに高温迅速処理することを可能とし,処理の迅速化に大きく寄与した。

さらに,1980年(昭和55年)4月,超高感度ASA400の“フジクローム400プロフェッショナル タイプD”を発売した。このフィルムは,当社が独自に開発したCLG技術やICL技術,超精密塗布技術と新しく開発したカプラーの組み合わせにより,シャープな解像力と鮮明な発色・ワイドな光源適応性・広いラチチュードなど安定した性能と使いやすさを備え,優れた画質が得られる。舞台・室内・夜景などの撮影や報道写真・スポーツ写真など,高速シャッターや望遠レンズを必要とする撮影に威力を発揮した。

フジクロームCBプリントの開発

[写真]フジクロームCBプリントによる写真展

フジクロームCBプリントによる写真展

[写真]フジCBカラーコピーマシン FCB-A345-II

フジCBカラーコピーマシン
FCB-A345-II

当社は,かねてからカラーリバーサルフィルムからカラープリントを作成する方法の一環として,反転カラープリントの研究を進めてきた。しかし,この分野は市場規模が小さく,量産に適さなかったので既存システムの導入を図ることとし,1968年(昭和43年)2月に,チバクロームを開発したスイスのチバ社(現チバ・ガイギー社の前身の1社)と提携,1970年(昭和45年)3月“フジカラーCBぺーパー”を発売し,“フジカラーチバクロームCBプリント”(後に“フジクロームCBプリント”と改称)として,フジカラーラポでプリント受注業務を開始した。CBプリントは,カラーリバーサルフィルムの画像を直接焼き付けてカラーポジプリントをつくるもので,宣伝・広告・装飾用写真をはじめ,商品見本写真や美術工芸写真などに使用される。画像保存性が優れ,また解像力や色彩度が高い高品質のカラープリントである。このCBプリントは,写真乳剤層に高純度のアゾ系色素を含ませ,現像過程で不要の色素を取り除きカラー画像をつくり出すもので,通常の発色現像法とは全く異なり銀色素漂白法と呼ばれるものである。

その後,1977年(昭和52年)12月には,撮影(複写)装置と自動現像機を一体化した“フジCBカラーコピーマシン”を開発し,“フジCBカラーコピーシステム”を完成した。このシステムは,コピー材料として“フジCBカラーコピーぺーパー”または“フジCBカラーコピーフィルム”を使用し,一般印刷物やデザイン・イラスト・図面から簡単な操作で短時間(約6分)に鮮明で色再現のよいカラーコピーが得られ,縮小・拡大コピーも可能である。

次いで,1980年(昭和55年)10月には,印刷におけるレイアウト製版の合理化の一環として“フジクロームCBデュープシステム”を完成させた。このシステムは,カラーリバーサルフィルムから直接品質の良い印刷用の反射原稿(カラープリント)を作るもので,“フジクロームCBぺーパー”と引伸機,専用プロセサー(“フジCBカラープロセサーFCB-1430M”)で構成される。その後,1982年(昭和57年)3月には,マイコン装備の専用引伸機“富士デュープリケーションエンラージャーD570AF”および“富士オートマチックエンラージャーG570AF”を発売した。

フジクロームRPプリントの開発

[写真]フジクロームRPプリントのカタログ

フジクロームRPプリントのカタログ

当社は,フジカラー製品のラインアップの一環として,1979年(昭和54年)3月,反転カラーぺーパー“フジクロームペーパー”とその処理剤を商品化し,“フジクロームプリントシステム”(後に“フジクロームRPプリントシステム”に改称)を完成し,フジカラーラボでプリント受注業務を開始した。

“フジクロームRPプリント”は,CBプリントと同様にカラーリバーサルフィルムから直接カラープリントができるシステムで,鮮明な色彩に加えて,解像力や白色度などに優れた特長をもっており,カラープリントの焼き増しや“フォトラマ”からのプリントなど,さらにアマチュア向けにも用途を広げた。

1982年(昭和57年)5月には“フジクロームペーパーグロッシー”を開発,プリントの品質をレベルアップした。また,同年10月には,展示・贈呈・デザイン用などに適した大型サイズについても,フジカラーラボでプリント受注を開始した。

中判カメラの整備

[写真]フジカGM670とGL690

フジカGM670とGL690

[写真]フジカGW690とGSW690

フジカGW690とGSW690

中判カメラは,1968年(昭和43年)12月の“フジカG690”発売以来,大判カメラにない機動性・スナップに適した速写性,大判カメラに匹敵する高画質を備えた重宝さが認識され,営業写真館をはじめ,プロカメラマンやアドバンスドアマチュア層にも次第に普及していった。

1973年(昭和48年)11月に“G690”をモデルチェンジし,ボディーの軽量化を実現した“フジカGL690”と画面が6cm×7cmの“GM670”を発売した。“GL690”と“GM670”は,ともに中判カメラとしては初めて絞り優先の電子シャッターを内蔵した“EBCフジノンAE F3.5 100mm”を装着し,交換レンズも共通にして,65mm,150mm,180mmのほか,超広角の“フジノンSW50mm”を整備した。両カメラとも35mm一眼レフなみの携帯性と操作性を有するカメラとして好評を得た。

その後,1978年(昭和53年)11月には“フジカGW690プロフェッショナル”を発売した。“GL690”をさらに軽量化し,操作性などの機能を一層高め,アドバンスドアマチュアからプロ写真家のあらゆる需要に対応できるカメラとして評価された。レンズは固定式とし,5群5枚構成の“EBCフジノンF3.5 90mm”を装着した。

さらに,1980年(昭和55年)3月には“GW690”の姉妹機として“GSW690”を発売した。超広角レンズの“EBCフジノンF5.6 65mm”を装備し,画角は76度で,風景やインテリア,スナップなど撮影領域の拡大を実現するプロフェッショナルカメラである。

大判カメラ用フジノンレンズの充実

1970年代に入り,営業写真とコマーシャルフォトともに,カラー写真化が一層促進された。これに伴って,当社はカラー撮影に対応したプロフェッショナル用レンズの開発に主眼を置き,製品の整備に努めた。

フジノンレンズは,多様化される需要に応え,プロ写真家が撮影目的別にレンズを選定しやすいようにレンズの特性,包括角度,焦点距離の組み合わせにより,W(標準レンズ),SWD(超広角レンズ),T(テレタイプの長焦点レンズ),SF(軟描写レンズ)などを整備しシリーズ化した。

コマーシャルフォト分野の需要増に対応し,従来の営業写真館向けの大判カメラ用に加えて,コマーシャルフォトで多く使用される4×5判(10.2cm×12.7cm),6cm×9cm判(大名刺判)カメラ用レンズも各種そろえた。

フジノンレンズの商品化にあたっては,フィルムメーカーならではの自然な色再現とシャープネスの向上を図った。特に,カラーバランスについては,純度の高い光学ガラスを使用し,どのレンズでも均一となるように留意した。また,EBCコーティングの採用により,カラーコントラストとシャープネスの向上を実現した。

プロフェッショナル用フジノンレンズのEBCコーティングは,1974年(昭和49年)11月,超広角レンズ“フジノンSWD”から採用し,画質の向上を実現した。また,露光時間32秒までの長時間コントロールが可能な電子シャッター付きのフジノンレンズの受注も開始した。

1978年(昭和53年)には,6群6枚のレンズ構成,周辺までシャープに写る広角レンズ“EBCフジノンW”を発売し,プロフェッショナル用フジノンレンズの名声を不動のものとした。1982年(昭和57年)には,コンパクト設計で軽量化し,携帯性を高め,コマーシャルフォトにおける風景写真用や商品写真用として開発した“EBCフジノンC”を発売した。

フジノンレンズは,プロフェッショナル用として厳しいユーザーニーズを十分に採り入れ,高品質と高性能化に挑戦し,そのラインアップを拡充してきた。その結果,フジノンレンズはプロ写真家のあらゆる需要に応えられる体制を築いた。

プロフェッショナル商品部の新設

[写真]機関誌「スタジオメモ」

機関誌「スタジオメモ」

[写真]機関誌「フォトクリエイター」

機関誌「フォトクリエイター」

当社は,創立当初に営業写真館向けに乾板と印画紙を発売して以来,営業写真館やプロカメラマン用の分野に各種の写真感光材料を商品化し,また,大判カメラ用レンズや中判カメラおよびその付属品,引伸機などの光学機械製品も整備して,その充実を図ってきた。この間,当社営業担当者の営業写真館訪問,あるいは機関誌「写真と技術」(後に「スタジオ・メモ」と改題)の定期発行,「富士営業写真コンテスト」の開催,また,カラー写真普及の当初は,社内外の講師による全国各地での講習会・実験会の実施,当社技術サービスセンターにおけるカラートレーニングなどを行ない,これらを通じて営業写真館とのコミュニケーションを深めるとともに技術の向上に貢献し,併せて,当社製品の普及を図ってきた。1971年(昭和46年)からは,当社の呼びかけによって結成された新しい営業写真館の経営研究をテーマとするPGC(パイオニア・グリーン・サークル)の全国活動をバックアップし,また,1979年(昭和54年)からは「ファミリーフォトキャンペーン」を毎年春秋2回開催し営業写真需要の拡大の一助とした。

一方,コマーシャルフォトの分野では,広告写真家団体による技術研究会・勉強会のタイアップ,機関誌「フォトクリエイター」の発行,フジクロームによる写真展の開催,月例フォトコンテストの開催などを通して,積極的に当社プロ商品の普及に努めてきた。

1974年(昭和49年)7月にはプロフェッショナル商品部を新設し,プロ商品の営業担当部門とした。

プロフェッショナル商品部は,営業写真館やコマーシャルフォトをはじめ,医学写真・学術研究・報道・スポーツ・鑑識などの業務用写真の分野,カラーラボや印刷関係など,幅広い需要層を対象として,長年にわたる営業努力により築きあげた信頼と培われた技術や経験を通して商品化を促進し,営業活動を積極的に展開していった。

 
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